高画質で豊かな表現力が魅力のフルサイズミラーレスカメラ。多くの写真ファンが憧れる機材ですが、センサーサイズが大きいがゆえの制約も少なくありません。いざ購入してから「重くて持ち出さなくなった」「予算が足りない」と後悔しないために、メリットの裏側にあるデメリットを正しく理解しておきましょう。
フルサイズミラーレスのデメリットは「機材コスト」と「取り回し」に出やすい
フルサイズミラーレスは、APS-Cやマイクロフォーサーズといった小型センサーの機種に比べ、圧倒的な描写力を誇ります。しかし、その性能を引き出すためには、カメラ本体だけでなくレンズや周辺機器にも相応のスペックが求められます。特に旅行やスナップ撮影をメインにする方にとって、機材のサイズ感やコスト面での負担は無視できないポイントです。
レンズ込みだと軽さが思ったほど伸びない
ミラーレスカメラは「一眼レフに比べて軽い」というイメージが定着していますが、フルサイズ機に関してはその限りではありません。確かにカメラ本体は薄く軽くなりましたが、センサーを隅々まで照らすためのレンズは、光学的な制約からどうしても大きく、重くなりがちです。特に明るい単焦点レンズやズーム全域でF値が変わらない大口径レンズを装着すると、システム全体では1kgを軽く超えてしまいます。
機動力を求めてミラーレスにしたはずが、実際に持ち歩いてみると首や肩への負担が大きく、結局持ち出す機会が減ってしまうというケースは珍しくありません。コンパクトなボディを選んでも、高性能なフルサイズ対応レンズを組み合わせると「取り回しの良さ」というミラーレス本来の強みが薄れてしまうことがあるのです。自分の撮影スタイルにおいて、この重量感を許容できるかを事前によく検討する必要があります。
本体とレンズの価格が上がりやすい
フルサイズミラーレスの導入において、最大の壁となるのが価格です。カメラ本体だけでもエントリーモデルで20万円前後、中堅クラスになれば30万円を超えることも一般的です。さらに、フルサイズの高画質を活かすための純正レンズは1本10万円以上するものが多く、広角・標準・望遠と一通り揃えるだけで、あっという間に車が買えるほどの金額に達してしまいます。
APS-Cサイズのカメラであれば、レンズも比較的手頃な価格でラインナップされていますが、フルサイズ用のレンズはガラスの枚数やサイズが異なるため、どうしてもコストが跳ね上がります。予算を本体に使い切ってしまうと、交換レンズを買い足す余裕がなくなり、せっかくのレンズ交換式カメラなのに表現の幅を広げられないという状況に陥りやすいです。周辺機器やメンテナンス費用も含めたトータルコストを把握しておくことが大切です。
ボケやすくてピント合わせが難しい場面がある
「大きなボケ」はフルサイズの代名詞ですが、これはメリットであると同時に、ピント合わせを難しくする要因でもあります。センサーが大きいほど被写界深度(ピントが合う範囲)が浅くなるため、少し体が動いただけでピントが外れてしまう「ピンボケ」が起きやすくなります。特に人物の瞳にピントを合わせる際、まつ毛にピントが合って瞳がぼやけてしまうといった繊細な調整が求められます。
[Image illustrating shallow depth of field where only a sliver is in focus]
また、集合写真や風景写真で「手前から奥までくっきりと写したい」場合でも、フルサイズだと絞り(F値)をかなり大きく設定しないと全体がシャープになりません。絞りすぎると画質が低下する現象(回折現象)も起きやすくなるため、ボケすぎる特性をコントロールする技術が必要になります。初心者の方にとっては、この「ボケの扱い」が思い通りの写真を撮る上でのハードルになる場合があります。
データが重くなり編集環境を選びやすい
フルサイズミラーレス、特に高画素機と呼ばれるモデルで撮影した写真は、1枚あたりのデータ容量が非常に大きくなります。RAWデータで撮影すると1枚で50MB〜100MBを超えることもあり、SDカードなどの記録メディアや、保存用のハードディスクがあっという間に一杯になってしまいます。大量に撮影するスタイルの方にとって、ストレージ費用もバカになりません。
さらに、これらの重いデータをパソコンで編集(現像)しようとすると、マシンスペックの不足が顕著に現れます。画像の表示に時間がかかったり、ソフトが強制終了したりといったストレスを感じることもあるでしょう。フルサイズを導入するということは、撮影機材だけでなく、それを快適に扱うためのパソコンやモニターといった「編集環境のアップグレード」もセットで考える必要があるということです。
フルサイズミラーレス選びで失敗しにくいおすすめ機種
デメリットを理解した上で、それでもフルサイズの世界に踏み出したい方へ、2026年現在、性能とバランスの良さで選ばれている定番機種をご紹介します。
Sony α7 IV
「フルサイズのスタンダード」として圧倒的なシェアを誇るモデルです。静止画だけでなく動画性能も極めて高く、どんなシーンでも失敗なく撮れる万能さが魅力です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 画素数 | 約3300万画素 |
| 特徴 | 人、動物、鳥の瞳AF対応 |
| おすすめ | 写真も動画も本格的に始めたい方 |
| 公式サイト | Sony α7 IV 製品情報 |
Sony α7C II
α7 IVと同等の性能を、驚くほどコンパクトなボディに凝縮したモデルです。フルサイズのデメリットである「重さ」を最小限に抑えたい方に最適です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 質量 | 約514g(バッテリー込) |
| 特徴 | AIプロセッシングユニット搭載でAFが超強力 |
| おすすめ | 旅行やスナップ撮影がメインの方 |
| 公式サイト | Sony α7C II 製品情報 |
Canon EOS R6 Mark II
キヤノンらしい肌色の再現性と、強力な手ブレ補正が自慢のモデルです。操作性が直感的で、動体撮影にも強い信頼の一台です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 常用ISO感度 | 最高102400 |
| 特徴 | 最大40コマ/秒の高速連写 |
| おすすめ | スポーツや乗り物、人物撮影をしたい方 |
| 公式サイト | Canon EOS R6 Mark II 製品情報 |
Nikon Z 6II
手に馴染むグリップ感と、ファインダーの美しさに定評があります。風景写真やスナップなど、じっくりと写真を撮る楽しさを教えてくれる機種です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 記録メディア | デュアルスロット(CFexpress/SD) |
| 特徴 | 画像処理エンジン2基搭載で動作が軽快 |
| おすすめ | 道具としての質感を重視する方 |
| 公式サイト | Nikon Z 6II 製品情報 |
Panasonic LUMIX S5II
動画機としての評価が非常に高く、正確な色再現と高い放熱性能を備えています。シネマティックな映像を撮りたいユーザーに選ばれています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 手ブレ補正 | アクティブI.S.搭載 |
| 特徴 | 像面位相差AFでピント合わせが劇的に改善 |
| おすすめ | Vlogや本格的な動画制作をしたい方 |
| 公式サイト | Panasonic LUMIX S5II 製品情報 |
Sony α7R V
6100万画素という圧倒的な解像度を誇る高画素機です。風景の細部まで描写したい、あるいは大きくプリントしたいという要求に応えます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 画素数 | 約6100万画素 |
| 液晶モニター | 4軸マルチアングル液晶 |
| おすすめ | スタジオ撮影や緻密な風景写真を撮るプロ・ハイアマ層 |
| 公式サイト | Sony α7R V 製品情報 |
デメリットが気になりやすい人の傾向と対策
フルサイズミラーレスのデメリットを重く感じるかどうかは、その人のライフスタイルや撮影目的によります。自分がどのようなスタイルを好むのかを分析し、事前の対策を練ることで、機材選びの失敗を未然に防ぐことができます。
持ち歩きが多い人はレンズサイズが負担になりやすい
日常のスナップや旅行がメインの方は、レンズを装着した時の「総重量」を第一に考える必要があります。対策としては、ズームレンズではなくコンパクトな「単焦点レンズ」をメインに据えることです。最近では各メーカーからフルサイズ対応の小型軽量なレンズも発売されています。
ボディ選びにおいても「Sony α7C II」のような小型モデルを選ぶことで、APS-C機に近い感覚で持ち出すことが可能になります。機動性を損なわない範囲での機材選定を心がけることが、長続きするカメラライフの秘訣です。
予算重視の人は交換レンズの総額で差が出やすい
本体価格だけに注目して予算を立てると、後でレンズを買う際に頭を抱えることになります。対策としては、最初から「サードパーティ製レンズ」を視野に入れることです。シグマやタムロンといったメーカーは、純正に引けを取らない画質のレンズを、純正の半額程度で提供しています。
特にソニーのEマウントは、これら他社製レンズのラインナップが非常に豊富なため、トータルコストを抑えやすい傾向にあります。自分が欲しい画角のレンズがいくらで売っているか、周辺機器の予算まで含めて「システム全体の予算」を組むことが大切です。
スポーツ撮影は望遠のコストと重量が増えやすい
子どもの運動会や野鳥撮影など、遠くのものを大きく写したい場合、フルサイズは少し不利な面があります。センサーが大きい分、同じ焦点距離のレンズを使っても、APS-C機に比べて被写体が小さく写ってしまうからです。より大きく写そうとすると、さらに巨大で高価な「超望遠レンズ」が必要になります。
対策としては、カメラ本体の「クロップ機能」を活用するか、高画素機を選んで後からトリミングする方法があります。あるいは、望遠がメインの撮影ならあえてAPS-C機を選択するというのも、賢い判断の一つです。フルサイズにこだわりすぎず、用途に最適なセンサーサイズを見極めましょう。
初心者は設定の幅が広く迷いやすい
フルサイズ機はプロやハイアマチュアの利用も想定しているため、設定項目が非常に多く、使いこなすまでに時間がかかります。対策としては、まずは「絞り優先モード(A/Av)」などのセミオート機能を使いこなし、徐々にマニュアル操作に慣れていくことです。
また、最近のカメラは被写体認識機能が進化しているため、難しいピント合わせをカメラ任せにすることも可能です。最初からすべての機能を完璧に使いこなそうとせず、フルサイズの恩恵である「ボケ」や「高感度の強さ」を実感しながら、自分のペースで学んでいきましょう。
フルサイズミラーレスを選ぶ前に押さえておきたいポイント
フルサイズミラーレスは、確かに「最高の一枚」を撮るための強力なツールですが、それ相応の覚悟と予算、そして使いこなすための工夫が必要です。大きくて重いレンズ、高額な維持費、データ管理の煩雑さなど、これらを「素晴らしい画質を得るための代償」として楽しめるかどうかが、フルサイズ選びの境界線になります。
もし、軽快に日常を切り取りたい、あるいはコストを抑えてたくさんのレンズを試したいというのであれば、APS-C機の方が幸せになれるかもしれません。逆に、夜景の美しさや、とろけるようなボケ味を極めたいのであれば、フルサイズはあなたの期待に120%応えてくれるはずです。今回のデメリットをしっかりと踏まえ、あなたにとって最良のパートナーとなる一台を選んでみてください。
